臨床実績
どんな患者が多いのですか?
都道府県が定める地域医療計画のなかで、救急医療体制を担う医療機関は初期救急医療機関、入院が必要な患者に対応する二次救急医療機関、二次救急で対応できない複数の診療科領域にわたる重篤な救急患者に対し,高度な医療を総合的に提供する三次救急医療機関に分けられ、救命救急センターは三次救急医療機関に相当します。当センターはそのなかでも、東京都内に4つしかない高度救命救急センターの一つとして認定されています。
当センターでは2023年、三次救急として搬送された患者を1420名受け入れており、そのうち来院時の重篤患者(厚労省基準)に該当するのは936名でした。診療の対象となる疾病については、図1に示した通り、すべての疾病に対応しています。その中でも、当センターでは重症外傷と病院外心停止が多いのが特徴です。心停止に対する体外式膜型人工肺(ECMO)を用いた体外循環による心肺蘇生(ECPR)は年間およそ20例に実施しており、全国屈指です。
図1 重症患者の疾病分類
実際の治療成績はどうなっていますか?
来院症例の重症度を評価するために、心肺停止と小児を除く全例でAPACHEⅡスコアを計算しています。
日本集中治療医学会の診療レジストリである日本ICU患者データベースにおけるAPACHEⅡスコアの中央値は16で、スコアから算出される予測死亡率の平均は12.7%になっています。
これに対し、当センターでは図2のようにAPACHEⅡスコアが高い患者が多く、スコアから算出される予測死亡率の平均は41.3%となりますが、実際の死亡率は12.4%となっています。上記のデータベースで公表された値よりも、より重症である患者さんに対して、非常に転帰は良いと考えられます。
※ APACHEⅡスコアは、集中治療室入室患者の重症度を客観的に評価するために作られた予後予測法です。12項目の生理学的パラメータ、年齢、合併する慢性疾患の評価の点数の総和として求めます。 点数が高いほど重症度は高いと判定され、最高点は71点です。
図2 APACHEⅡスコアと転帰
当科の課題
もともと重症度の高い患者であるとはいえ、図3のように、退院時の機能予後については中等度以上の障害を残してしまうことが大半となっています。
志を持った皆様に新たにご参画いただくことによってより緻密な診療体制を構築し、重症度の高い患者であっても十分な機能予後の回復を果たせるような改善が当科の課題であると考えています。
図3 重症患者の機能予後(退院時)